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木口恒

木口さん、どんな仕事してるんですか?(後編)

現役時代の話もざっくばらんに話をして下さるからこそ、飯盛研現役メンバーから慕われる木口さんですが、なぜ今のお仕事をなさっているのか。取材当時、就職活動を終えたばかりの筆者の悩みも交え、木口さんの考えを伺うことができました。前半はこちら

石川
先ほどのお話は、今の木口さんのお仕事とつながっていると感じましたが、改めて今のお仕事について教えてください。

木口
今は会社を作りたい、何かを始めたい、という思いを持つ人の話を聞いて、こういう見せ方をすればいいのではないですか?というお話をしたり、実際にロゴやデザインを作ったり、継続的な見せ方を考えたりしています。
ロゴのセミナーやブランディングの方法など、お話するだけで終わることもありますが、やはり実際にロゴやアイデンティティーを作らせてもらうことが多いです。ただ、やっぱりデザイナーという肩書きはなんとなく恥ずかしいというか、違和感がありますね…。

ブランドの接点という考えでデザインを考える

石川
なぜですか?

木口
デザインの勉強はしましたが、美大でもないですし、SFCでもデザインの研究室にも所属していなかったですし。一応ブランディングデザイナーとして仕事はしていますが、コンセプトやビジョンの部分だけ担当させてもらうことも最近多いですし、デザイナーというか、他にいい肩書きがあればいいなぁ…。

石川
どこかの企業に就職して、デザイン職で働くことは考えなかったのですか?

木口
もちろん考えました。ただ私、一度会社に就職しましたが、すぐに辞めてしまった経緯がありまして…。そこでわかったのは、「会社に入って仕事するよりも、一人で仕事する方がいいな」ということに気がついて。そちらの方が社会に貢献できるんじゃないかと。失うものもそんなにないし、リスクが少ないうちにとりあえず一人でやってみる。それでなんとか、今まで生きてきましたから。週6日、ほぼ毎日仕事してますが、毎朝満員電車に乗ることもないですし、自分で自分をコントロールできるのは本当に幸せなことで、本当にありがたいです。

石川
フリーランスで仕事をするって、私にとっては大きな壁だという印象があります。フリーランスとして生きていく際、どういうことを心がけてきたのですか?

木口恒

木口
一人で仕事を始めるときは「人の話は聞かない、自分の言うことを聞く」ということです(笑)。自分で会社をつくるとか、独立するという時、賛成してくれる人はなかなかいない。反対されて、「やっぱりそうだよな」って思うのであれば、起業する覚悟とか自信がまだ足りない証拠だと思うので、やめた方がいいと思います。ただ、反対されても「いや、なんとかなるんじゃないの」と思えたり、「やっぱりやりたい」と思えて、人の言うことを聞けない、全然耳に入ってこないのであれば、挑戦してみた方がいいですよ。
今のSFC生は、起業とか一人で仕事することに対して、壁が高いと感じすぎる気がします。そんなことないですよ。こんな僕でもできますから。
会社とか組織が自分の性格に合っていたり、やりたいことができる会社に入ることができれば、それはとても幸せなことですし、環境に感謝すべきです。ただ仮に合わない会社に入って無理して毎日過ごしている方が、独立することよりもよほど大変なことです。毎週月曜を嫌だなと迎えるのであれば、独立した方がよっぽど楽しいと思いますよ。人生がかわいそう。

石川
木口さんは、今まで研究してきたことや好きなことを武器にしているから、自信があってそれで独立して仕事できていると思います。でも、他の学生から見れば自信がないので「どうせ私は…」となってしまうと思いますが…。

木口
20年以上生きてきたんですから、好きなこと、あるでしょ?好きなことを活かして自分で生活できないかなって考えたら、意外と方法は見つかるはずです。好きなことがなくて会社に入ることは、しょうがないと思います。ただ、好きなことをどうにかして生活の糧にするかというのは、卒業までに一度考えるといいと思いますよ。自信がなくても、なんとかなるんじゃないかなという道筋は見えると思いますし、やはり難しそうだなと思ったら、自分に合う仕事とか、社会に提供できる価値をしっかりと考えて、それが実現できそうな会社に入るように頑張ればいいんじゃないですかね。
でも、きちんと保険をかけておくことを忘れないでください。いきなりジャンプしてもしょうがないので、石橋を叩く方がいいと思います。私の場合、石橋さえなかった(笑)。以前はまったく仕事が入らない時期もあったりして、本当に辛い思いをしました。いきなり海の底から這い上がっていくような感じですよ。今はなんとか水面近くまで来たけど、まだまだ。

木口恒

石川
最後に現役の学生に向けて伝えたいことはありますか?

木口
時間だけは全員平等なわけですから、時間の使い方について意識することは大事ですよ。私は学生時代に本気で一度、時間の使い方とか、生活のメリハリとかをどうやるか、考えておけばよかったなと思いました。よく周囲の大人が言うでしょ、「20代はあっという間だよ〜」とか。自分は「10年間があっという間?嘘つけ!」って思ってましたが、ほんとですよ。自分の人生、大切に生きてください。

筆者のまとめ

飯盛研出身で少し人生の先を歩く木口さんは、本音でご自身の考えを言って下さるから説得力がある。だから信頼したいと思える。筆者の私にとってはとても尊敬できる先輩です。私もこんな風になれたらいいな。

written by 石川 瞳