白鳥製薬株式会社

白鳥製薬株式会社
社員を考えてお客様を考える

 2013年11月、白鳥製薬株式会社(以下、白鳥製薬)代表取締役社長の白鳥豊氏は、社長室に大きく飾られている「志」という文字を見つめながら同社の今後の経営戦略について考えをめぐらせていた。

白鳥製薬で扱っている製品の一部
同社で取り扱っている製品の一部

 1916年創業の白鳥製薬は千葉県習志野市を拠点に家族経営で事業を行ってきた。創業の品であるカフェインに始まり、時代のニーズに合わせて主力商品を変えながら習志野でも有数のメーカーに成長し、今では名実ともに老舗企業と呼ばれるようになった。現状の取り扱い製品は、栄養ドリンクや風邪薬などに使われている創業の品でもあるカフェイン、抗がん剤をはじめとした医療用医薬品の原薬、化成品やテレビの液晶の原料と多岐に渡る。

「わたしたちのCredo」
「わたしたちのCredo」

 2013年度、白鳥製薬は創業97年を迎え、代表取締役社長を務める豊氏は五代目にあたる。同氏は創業者の孫娘の夫にあたる。インタビューの中で「組織能力を高めるのが僕の仕事」と語った豊氏は、自身の入社当初から社内の意識改革に取り組んできた。副社長のときに経営理念をつくり、リッツカールトンのボトムアップの考え方をもとに「わたしたちのCredo」を社員自らに立案させ、作成するなど、その組織改革の足跡は数多い。

代表取締役社長の白鳥豊氏(左)と、専務の白鳥悟嗣氏(右)
代表取締役社長の白鳥豊氏(左)と、専務の白鳥悟嗣氏(右)

 業界全体の動きとして新薬の減少等に伴い少品種多量生産から多品種少量生産へ軸足をシフトしてきているなかで、どのような方向に舵を切っていくのか。また、医薬品特許切れの2010年問題を受けて、ジェネリック医薬品の扱いはどうするのか、社内においてCredoをさらに浸透させるにはどうすれば良いか、豊氏は思案していた。また、専務を務めているのは同氏の子息である白鳥悟嗣(さとし)氏であった。自身の社長になってからの人生を振り返り、「もう長いね、そろそろ15年。変わんなきゃいけないね」と笑いながら語る豊氏は、次世代への事業承継を考えていた。

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本ケース教材は、NPO法人ファミリー・ビジネス・ネットワーク・ジャパン、慶應義塾大学飯盛義徳研究室の共同研究の一環として、慶應義塾大学総合政策学部准教授の飯盛義徳の監修のもと、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)伊藤妃実子、同所員の木口恒、飯盛義徳研究室研究員の蒲地亜紗、総合制作学部3年の柳生健二郎、環境情報学部3年の江本卓史、同学部1年の武市陽子が作成した。このケースは、経営管理などに関する適切あるいは不適切な処理を例示することを意図したものではない。文中の役職に関しては明記していない限り2013年12月現在のものである。なお、作成にあたり、白鳥製薬株式会社代表取締役社長の白鳥豊氏、白鳥株式会社専務の白鳥悟嗣氏から資料提供、取材に多大なるご協力をいただいた。ここに感謝したい。(2014年8月)