株式会社八木熊

株式会社八木熊
「商社×メーカー」として、
信頼と歴史を次世代に繋ぐ

 2013年10月、株式会社八木熊(以下、八木熊)代表取締役社長の八木信二郎氏は、福井市内を見渡す本社屋上で、先人たちが築き上げた基盤を活かしながら「商社×メーカー」という同社の強みを武器に、いかにして事業を発展させていくか考えをめぐらせていた。

八木熊の自社工場内
八木熊の自社工場内

 八木熊は、1895年(明治28年)に初代・八木熊吉氏が絹織物などに使われる絹用の「ふのり」の製造販売を行うメーカーとして福井県福井市において創業した。その後、信二郎氏の父であり三代目の八木熊吉氏が昭和20年代の転換期において繊維用合成糊材・油剤の卸業へ転身。昭和40年代の成長期には非繊維分野にも参入を果たし、地元における化学品専門商社として発展した。加えて三代目は福井に新しい産業を興すべく1953年(昭和28年)に福井ビニール工業株式会社(現:フクビ化学工業株式会社/証券コード7871)を創業し、商社だけでなくメーカーとしての機能を充実させた(付属資料1:八木熊の沿革)。

形成されたプラスチック部品
形成されたプラスチック部品

 2014年現在、同社は「100年100人、100億」(正確には創業119年、社員数104名、売上128億円)企業として国内外に業容を拡大していた(付属資料2:業績)。主なる事業内容は、繊維用糊材・油剤を扱う「繊維関連事業」、合成樹脂の原料販売・成形品の製造販売を行う「合成樹脂関連事業」、化学品・産業資材・機械などを扱う「産業資材関連事業」、輸出入・三国間貿易を手掛ける「国際関連事業」、工事用バリケート・規制機材などをブランド展開する「ブランド事業」、そして顧客のニーズに応じて素材や機能の開発提案から製造までを一貫して行う「ODM(Original Design Manufacturer)事業」など多岐に渡った。

株式会社八木熊 代表取締役社長の八木信二郎氏
株式会社八木熊 代表取締役社長の八木信二郎氏

 八木熊は時代とともに変化を果たし、現在は「商社×メーカー」の融合体企業としての強みを武器に市場での差別化を図ってきた。五代目(八木家としては四代目)の信二郎氏は「商社は世界各国からモノや情報を得ることができるが、自ら製品を生み出すことはできない。逆にメーカーは、自分たちのアイディアや技術を駆使して世界で最高のものを作ることができるが、自分が扱っている素材、有している技術以外のものは作れない」と語り、その両者の弱みを強みが補完しながら、いかに多様化する市場のニーズを捉えていくか、戦略を練っていた。

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本ケース教材は、NPO法人ファミリー・ビジネス・ネットワーク・ジャパン、慶應義塾大学飯盛義徳研究室の共同研究「長寿企業の経営革新」の一環として、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)伊藤妃実子が作成した。このケースは、経営管理などに関する適切あるいは不適切な処理を例示することを意図したものではない。また文中において一部敬称を省いている箇所があることをご理解いただきたい。文中の役職に関しては明記していない限り2014年7月現在のものである。尚、作成にあたり、株式会社八木熊代表取締役社長 八木信二郎氏、相談役 白﨑昭喜氏から資料提供、取材に多大なるご協力をいただいた。ここに感謝したい。(2014年7月)