大和合金株式会社

大和合金株式会社
縁の下の力持ち、
世界と日本を底支えする技術の伝承

 2013年9月、大和合金株式会社(以下、大和合金)代表取締役社長の萩野源次郎氏と、先代で父である萩野茂雄氏は、ゴーンゴーンと鳴り響く工場からのプレス音の中、同社の技術を世界に向けて広げていく戦略について考えを巡らせていた。

大和合金の工場にある大型ハンマー
大和合金の工場にある大型ハンマー

 大和合金は、1941年(昭和16年)に三代目・源次郎氏の祖父にあたる萩野茂氏を初代として創業した。前身である富士特殊金属研究所から、需要増に対応するために大和合金株式会社に改組したのが1943年(昭和18年)のことであった(付属資料1:大和合金株式会社の沿革)。終戦後に一旦会社を解散し、1953年(昭和28)年に再発足した。そして2014年現在、同社は特殊銅合金メーカーとして国内450社以上のメーカーとの取引を行い、売上は、販売・機械加工を担う大和合金株式会社と、製造部門を担う三芳合金工業株式会社を合わせて60億円を超えた。

代表取締役社長の萩野源次郎氏(写真・左)と、先代で父である萩野茂雄氏(写真・右)
代表取締役社長の萩野源次郎氏(写真・左)と、先代で父である萩野茂雄氏(写真・右)

 同社の特長は、特殊銅合金のスペシャリストとして時代のニーズに即した製品や金属材料の開発を行ってきた点にあった。創業時の戦時中には戦車のスターターピニオンギアや魚雷のバルブシートを軍部に対して納入し、終戦後には自動車メーカーなどからの要請があって再起を図った。そして現在では、主力製品のクロム銅で業界トップクラスのシェアを獲得し、知る人ぞ知る特殊銅合金メーカーとして成長した。また新製品の開発にも力を入れており、有害とされているベリリウムを排したNC合金の開発にも成功した。

熱せられた部品をフォークリフトで取り出す
熱せられた部品をフォークリフトで取り出す

 同社が提供する部品は、航空機、船舶、F1マシンなど幅広い場面で採用されており、今後は国内のみならず海外に向けて、同社が誇る技術力を発信していく必要性を感じていた。三代目・源次郎氏はこの点について、「それぞれの業種・業界向けに、まだやれていないことがある」と語った。今後は、大和合金が培ってきた技術力を日本国内だけでなく世界各国の企業に対してアピールすることが重要になると考えていた。

ケース教材をダウンロード
パスワードを申請
本ケース教材は、NPO法人ファミリー・ビジネス・ネットワーク・ジャパン、慶應義塾大学飯盛義徳研究室の共同研究「長寿企業の経営革新」の一環として、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)伊藤妃実子が作成し、写真は全て同研究所員(訪問)の木口恒が撮影した。このケースは、経営管理などに関する適切あるいは不適切な処理を例示することを意図したものではない。また文中において一部敬称を省いている箇所があることをご理解いただきたい。文中の役職に関しては明記していない限り2014年1月現在のものである。尚、作成にあたり、大和合金株式会社代表取締役社長 萩野源次郎氏、相談役 萩野茂雄氏から資料提供、取材に多大なるご協力をいただいた。ここに感謝したい。(2014年1月)