私の人生の中で、自分の考えが大きく変わった転機は、
1997年に起きた「神戸連続児童殺傷事件」でした。
この時、私は中学生で、犯人は同じ年でした。
この時まで、生き方に正解があると思っていました。
自分が頑張れば、自分と自分の家族は幸せにできると思っていました。
ただ、この事件が起きた時に、それが違うことに気がつきました。
人は社会の中に、つながりの中にいる。
自分は、家族と、学校の先生と友達と、地域の住民との関係性の中にいて、
周りにいる人が異なれば、その人との関係性が変われば、
自分の考え方も存在も変わるのだと。
それから8年間、一人一人が、人とのつながりの中で、
自分が生まれてきた意味を創ることができ、
「生まれてきて良かった」
そう思えるような人生を送るための方策を考え続けていました。
また、この間に、交通手段も通信手段も発達し、
様々な垣根を超えて、人が繋がるようになりました。
このような情報化社会・国際社会においては、
異質なもの同士、あるいは異質な共同体同士が、
相互に交流できる「開かれた公共性」の再構築が重要です。
さらに、他人事を自分事として考え、行動していくことが、
自分も社会も良くしていく方法なのだと思います。
2005年、
慶應義塾大学SFCの國領二郎先生と飯盛義徳先生の研究会で
ケースメソッドに初めて出会いました。
涙が出そうになるくらい、感動しました。
その教室では、
他者の考えを聴き、受け止めながら、自分の意見も伝え合っていく、
「他者との相互作用を通じながら、一人一人の存在が立つ」場が実現されていました。
ケースメソッドが他のワークショップにはない魅力を持つのは、
ケース教材の主人公の立場に立って、
「自分だったらどうするか」と考えるところにあります。
この「自分だったら」と考えることが、他人事を自分事として考える訓練になります。
できるだけ若い内からこの経験ができるような機会を創りたい。
そう思い、VITA+(ビータプラス)を立ち上げました。
VITA+には、
Vitaminの接頭語である「VITA」に「活力」という意味を、
「+」に「つながり」という意味を込めています。
立ち上げから現在までに、
今までビジネススクールで用いられてきたケースメソッドを改編して、
子どもたちも参加ができる「ジュニアケースメソッド」を開発してきました。
また、社会のつながりの中で、
他者のことを自分のこととして考える訓練ができるように、
身近な社会である「地域」を舞台に、
「地域」で活躍する人を主人公にしたケース教材を開発してきました。
その結果、子どもも大人も一緒に議論できる可能性が地域に生まれました。
この5年間、約40回のジュニアケースメソッドを実践し、約700名の中学・高校生に参加してもらいました。
ただ、世代の垣根を越えて、子どもも大人も一緒に自分の地域について考えたのは数回でした。
高校の中だけで実践をしても、
コミュニケーション能力の向上や自分で考える力がつくという効果が聞こえてきております。
しかしながら、
異質な他者との関係性の中で自分を創っていくためにも、
また、行政だけではなく、住民一人一人が地域について考え、行動し、
自分が生きていく社会を良くしていくためにも、
もっと、様々な場面でジュニアケースメソッドを実践し、
皆さんに参加していただきたいと思っております。
最後に、ジュニアケースメソッドにおいて、
子どもたちが考え、発言するための大きな要素として、
VITA+は大学生が企画・運営していることが挙げられます。
2011年から、現役大学生に代表を引き継ぎ、
私はサポーターとして、
日本中に「VITA+」の種を蒔いていきたいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 |